重箱

「キンガー」
「ガショー」
「うわ、出たな悪霊コンビ」
「ビックリしたかえ?」
「エラい勢いで驚いてたぜ」
「全然そんな事ないわよ?」
 口調はおかしいが普通だと云うように霊夢。
「よし、じゃあもう一度やってみよう」
「うーん……折角だから付き合ってみようか」
「賭けてもいいけど、無駄だと思うわ」
「私はもう一度驚かせる自身があるけどね」
「狙いがばれてると難しいぜ」
「絶対に無理だと思うんだけど……」
「どうなるかは意外と判らないものよ」
「よく判らないが……」
 霊夢は、もういいわ、と云うように頭を振り
「がびーん……コレで満足?」
「苦しいんじゃないかい?」
「いやまあ」
「あー、もー、しつこいわね」
 魅魔は、まあいいか、と頷き一言
「で、その雑草雑炊は何だい?」
「正月だってのに、そこまで切羽詰ってたとは知らなかったぜ」
「失礼な、今日が何日か分かってるの?」
「何日だっけ?」
「年越しは薬の精製で忙しかったからよく判らないぜ」
 そう云って、肩をすくめる魔理沙。対する霊夢も呆れた口調で返す。
「七日だ、七日」
「おや、もうそんなに経ってたのかい」
「年明けは臨床実験で忙しかったからよく判らないぜ」
 もはや呆れるのも飽きたように。
「あんた達は何しに来たのさ」
「最初に云った通りだけど?」
「新年の挨拶だぜ」
「あー……あれね」
「と云うわけで、改めて、明けましておめでとう」
「目出度いぜ」
「はいはい、明けましておめでとう」
 頭が、と云う魔理沙の呟きは黙殺された。

                    ◆

「ところで霊夢、七草粥は何でこの時期に食べるか判ってて作ったのかい?」
「何よそれ」
「霊夢のところでそんなに豪勢なおせちが食べられるとは思えないぜ」
「失礼な」
 口調は強いが、矢張り少々苦い顔。
「海老とか」
「頭だけじゃないかい?」
「鯛とか」
「多分粗の吸い物だぜ」
 しばしの沈黙。
「お帰りはあちらの鳥居からどうぞ」
「なんだい、昼ごはんくらいは出してくれてもいいじゃないか」
「あんたは要らないでしょうが。
 て言うか、うちで祀ってるんだから、お年玉くらいよこしたらどうなの?」
「此処に、神様に供物を強請る不良巫女が」
「巫女なのかも怪しいぜ」
「一番怪しいのは、あんたが神様だって事だけどね」
「此処に、神様に猜疑を掛ける不良が」
「巫女は廃業させられたぜ」
「勝手に廃業させるな……。まったく、あんたらに付き合ってるとろくな事が無いわ」
「付き合ってなかったら何も無いぜ」
「うーん……」
 少しの苦笑い。
 そして、それもそうか、と無理やり納得。
「で、七草粥が何だっけ?」
「ああ、七草粥ってのは、医食同源だぜ」
「…………」
「御節はあんまり胃に佳くない物が多かったりするからね。
 これまでに荒れた胃を労わる為に食べるんだよ」
「割と本当だぜ」
「と云うわけで、お年玉」
「……はい?」
「この素晴らしい知識は後々何かしらになるわよ」
「知は力なりだぜ」
「力は金なりよ」
「ならん、ならん」

                    ◆

「じゃ、そろそろお暇しようかね」
「何だ、もう帰るの。暇そうなのに」
「失礼な、これでも色々忙しいんだよ」
「暇つぶしで忙しいぜ」
「魔理沙も云うようになったね」
「木の精だぜ」
「ここで散らすな。あんたも、帰るならさっさと帰れ」
 魅魔に手を振る。
「私ももう帰るぜ」
「ん、そう……じゃあ、レミリアによろしく云っといて」
「判ったぜ」
「……本当にあの魔女のところ行くんだったの」
「最近は私の事を放ってあの娘のところに行くのよ……よよよ……」
 魔理沙は黙殺。
「そうそう、霊夢に一ついいたいことがあるぜ」
「何よ」
「私は多分生きてるぜ」
                              (了)


あとがき
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