ないた黒猫
「南無〜。きっと極楽浄土は、暖かくて幸せに違いないでしょう」
猫の妖怪、橙が落ちてゆく。
そうだ、と呟き、咲夜がそれを追う。
◆
「1つだけ気になる事があったのよ」
応急手当をしたあと、咲夜が尋ねる。
「あなた、猫の妖怪よね。なんで「にゃ」って言わないのよ」
橙は何を言っているのか分からないという風に首を傾げる。
「どこかに頭でもぶつけた?」
「ぶつけてないわ」
「じゃあ、拾い食い? それはやめた方が」
「失礼な、あんたじゃあるまいし」
しばし睨め付ける咲夜。
「もう少し追い詰めたら、本性表して鳴くかしら」
「ちょ、ちょっと、何する気」
「大丈夫、痛くはしないから……痛くはね」
と言ったところで安心するはずもなく、怯える橙。
恐怖から来る涙が目に薄っすらと浮かんでいる。
「やっぱり、猫といったら、仰向けくすぐりの刑〜」
え? と言う間に地面に組み敷かれ、やめろ、という前に脇に手が伸びる。
直後、あはははは、と笑い声がマヨヒガに響いた。
「な、何か屈辱ですがなもしー!」
笑いながら、じたばたと抵抗はするものの、くすぐられているせいか、
咲夜の押さえつける力が強いのか、それとも先ほど撃墜されたばかりであるせいか。
ともかく、ワキ、首筋、ウチモモ、他様々な所をくすぐられる橙。
「ほら、観念して本性を表しなさい」
しかし、当然の事ながら、にゃと言う様子もないので一旦手を止める。
見ると息は荒く、顔は紅潮し、体全体がしっとりと汗ばんでいる。
これだけ暴れれば当然か、と思い少し休もうと決める。
が、橙が何やら足をもぞもぞさせている事に気付く。
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